英語長文が読めない理由

単語信仰が犯人

正しい英単語を覚えないと、得るものの少ない、ムダな時間を過ごすことになります。

単語をひたすら覚えさせる現代教育の間違い

英語が苦手な生徒ほど、ひたすら英単語を覚えようとしている。英語は英単語が勝負だから、先に覚えないと話にならない。そう教えられたのでしょう。しかし、本当にそうだろうか?

もしそうであれば、中高の6年間でひたすら英単語を覚えてきた生徒たちは、さぞ英語の成績がよいはず。しかし現実では、センター試験の平均点は6割程度にとどまっている。6割取れるのはまだよい。問題は、進学校と言われる学校に在籍しながら、4割だとかを取ってしまう生徒がいることだ。本人の素質の問題?ならばなぜ、その学校に合格しているのか?疑問である。

基本単語は存在する

確かに、覚えていなければならない基本単語は存在する。せめて大学受験には3000単語レベルは欲しい。だが、なぜかそこで、5000~6000語レベルを「いきなり」要求するのが学校教育。ここ大事ですよ?野球部で例えると、キャッチボールすらしたことのない初心者に、いきなりインフィールドフライのさばき方を教え込むようなものだろうか。

3000単語レベルとは

3000語レベルの単語には、Iとかdoとか、そんな超基本単語も含めての話です。だから、ほとんどの受験生にはこのうち8割程度の単語が身についている。おそらく、覚えるべきは多くても600単語位だと思っている。

問題は、そのような基礎単語、例えば「文頭でsomeが出てきたら何を考えるか」、などの基本操作を教えていないことだ。前置詞は大事!とか言っておきながら、きちんと教えない。形容詞と副詞の差すら分からない。これは学校の怠慢だ。

センター試験によく出る単語は何種類?

僕はかつて、センター試験過去10年分の長文に含まれる英単語をフルカウントしたことがある。結果、確かに4000種類の単語は出てきた。(とはいえ、過去形などの変化も別物とカウントした。生徒にとっては別物だからである。)

では、毎年出ると仮定して、10回カウントされた単語数はいくつか?なんと、たったの500種類にも満たなかった。1回だけの単語も数多あり、それはなんと1500種類以上あった。生徒が覚えようとしているのは、まさにこの1500の方である。

読めないと詰むのでは?

ここまで来て、見ていただきたいのは、この序文である。

(リンク)必須3000単語一覧

With 2,500 to 3,000 words, you can understand 90% of everyday English conversations, English newspaper and magazine articles, and English used in the workplace. The remaining 10% you’ll be able to learn from context, or ask questions about. However, it’s essential to learn the right English vocabulary words, so you don’t waste your time trying to memorize a huge collection with very little benefit. The list below seems long, but when you can use all these words with confidence, your English vocabulary will be fully functional.

はっきりと、「普通の英文は90%が3000単語で書かれている。残りの10%も予測できるものがある。」我々が読まされている長文はまさにこの「普通の英文」レベルである。

特に赤字部分に注目していただきたい。正しい英単語を覚えないと、得るものの少ない、ムダな時間を過ごすことになります。と書いてある。英単語を覚えろ覚えろ言う人は、この事実を知らない、あるいは理解していない、不勉強な人間である。そのような人間は、英語を教えるべきではない。

センター本試から

以下の長文で、高校3年生が分からない、といった単語に注目してみる。

Rats, mice, hamsters, and squirrels belong to a large group of animals called rodents. It is estimated that there are about 2,000 species of rodent, and they are believed to be one of the most successful groups of animals we know. They are considered successful because the rodent group accounts for over 40% of all mammal species on earth. Of all the rodents, the mouse-like rodents, such as those mentioned above, are probably the most successful, and it has been suggested that what makes them so is their teeth.

このうち、上記のサイトで確認できるものは、estimate, species, consider, account, mention, above, probablyであり、とてもよく出現する。きちんとした読み方を学べば、要はrodent=hamsterなわけだから、以下に置き換えればよい。データに関するところもいい加減に読んでよい。

Hamsters belong to a large group of animals called hamsters. There are about 2,000 hamsters, and they are believed to be one of the most successful groups of animals we know. They are considered successful because the hamsters group accounts for over 40% of all mammal species on earth. Of all the hamsters, the mouse-like hamsters are the most successful, and it has been suggested that what makes them so is their teeth.

あら不思議、これならまだ読めそうだ。とにかくこういう努力が足りない。いや違う、こういった必須能力を教えていない、それが現代教育なのだ。というかね、単語知っていても、文章の言いたいことが分からない生徒が多いのはどういうことか。

原因はなに?

ではなぜ、このようなことが起こるのか?

それはおそらく、先生になって初めて勉強をして手応えを感じた人が多いことと、難関大学出身者の傲慢が原因である。

大人になってから頑張った人

これがまた厄介で、先生になってから「英語だけをひたすら何年も」勉強し始めた結果、やっと結果が得られた。「おおすごい、これをすればきっと生徒も出来る!」まさに天啓である。「先生も昔は苦手だったんだぞ!」などと言いながら、生徒にやらせる。結果はもちろんでない。なぜなら、特に受験生には「英語だけ」「何年も」やる時間は残されていないからだ。

難関大出身者

難関大出身者(特に塾講師に多い)にありがちなのが、「相手もこれ位わかるだろ」の、「これ位」がすごく高いことである。経験上、塾講師になるような難関大出身者には、協調性とか、共感する力とか、そういうのが乏しい人が多い。だから、「自分はこれ位の問題を解いてきた。」を平気で押し付ける。これを読んでて、きぃ~!!ってなる人がいたら、そう言う所だぞ。

英単語信仰はこれからも続く

残念なことに、英検やTOEICが必須になりつつある今の教育課程においては、ますます英単語暗記の需要が高まりつつある。おそらく今後も、長文難民が増え続けることであろう。

要は、覚える順番の問題なのだよ。

学生たちは頑張れ、超がんばれ。